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2014/12/09

はじまりのこと


2014年9月。「わたしは命をかけてチャレンジするから、あなたもチャレンジしたらいい」と言った。こまっちゃんは6年勤めた会社を辞めることを決め、同月25日、わたしの出産に立ち会った。それから一緒に子育てすること3ヶ月。まだ次の仕事は決まっていない。

育児2ヶ月目から、彼のファンであるところの、別に求人を出していないオーガニック食品の輸入代理店に、自分をアピールする為の資料をつくり始める。前職と違う畑の、オーガニックマーケットに関する英文の論文をいくつも読み、それを日本のマーケットでオーガニック製品を売ることのリサーチャーの視点からの提案という形でレポートにし、そのレポートの英語バージョンを用意し、それはもう、部屋に籠って、まるまる2ヶ月かかったのだ、10枚のレポートを書くのに。


レポートはキンコースで製本。カバーレターは厚手の上質紙を使うこだわりっぷり。証明写真は写真館で撮影してなんと2枚で3500円だ。こまっちゃんを知っている人には「らしい」と納得してもらえるんじゃないか、これ以上出来ないってくらいの、真心を込めた履歴書を用意した。レポートの英文は、プロにチェックをお願いして5万円をかけた。


手元に届いた頃を見計らって、相手の会社にTEL、言われた言葉は「正直扱いに困っている」「求人していないし、する予定もないので」。


なんでかわたしもこまっちゃんも、採用される気満々だった。求人も出していないし、どんな業務かも知らなかったのに。


二人でおおいに落ち込む。寝付けず、翌日。こまっちゃんは数日前にオーガニックEXPOに行っていて、そこでもらったパンフレットに掲載されている企業に求人があるか片っ端から調べ始める。そして求人は全く無い。

さらにEXPOに出店していた農業生産者の方の求人も調べ始め、日本全国の農園のサイトを見、そしてそこに写っているおじいちゃんの写真などを見、
「おれ、こういうふうになりたい…。」
ファンだった輸入代理店に行けないなら、他のどこだってワクワクしないのだ。なのに農業もいいなと思い始めると、今まで無かったような、丹田がぱーっと広がるような、目の前が開けていくような気持ちになるのだ。

そして、ぴったりの、あつらえたようにぴったりの求人を見つける。千葉の有機農園。
農業法人の正社員。1万5千円の寮あり。子連れで何とかやっていけそうな給与。

こまっちゃんは10年前、本当は大学を卒業した後農業をやりたかった。でも父親に「もうすこし広い世界を見てからでもいいじゃないのか」と言われて農業ではない道に進んだ。その閉じていた蓋が、完全にぱかーんと開いた瞬間だった。

みるみる顔つきが変わって、はしゃいで、いきいきとして、農業がやれる、嬉しい、嬉しい、が身体中からほとばしっていた。

これは、もう、完全に、スーツを着て都心に向かう仕事には戻らないかもしれない…。


まあいいや。わたしも捨てよう、都会の緩慢で贅沢な暮らしを。土ぼこりと日差しの中で植物の匂いを嗅いで生きよう。なんだ、そんならそうと、言ってくれればよかったのに。なんだ、農業がやりたかったんじゃん。


農家のおしごとナビで求人に応募、国立にある八百屋「あひるの家」のおじさんに報告して力強い後押しをもらう。

新規で農業を始めた高校時代の友人夫婦に話を聞いて、見通しが甘いんじゃないかとか、ともちゃんは農家の嫁が何であるかを分かってないとか、もう平穏な生活には戻れないとか、貯金の残高とか、話し合いとか、けんかとか、けんか後の散歩とか…。

でも応募は出した。未知なる前へ進むのだ。あとは農園からの連絡を待つばかり。

書類が通れば面接、1ヶ月の試用期間を経て採用だ。そしたら引越。

電話が来た。


なんと、輸入代理店の社長だった。

「採用の予定は無いけど、会いたいと思っているなら会おう」

よかったね、こまっちゃん。2ヶ月が報われたね。

電話の後、自己肯定感すっかり凹まされてたもんね。

前職を退社した時に、仲間にプレゼントしてもらった、タリスカ、18年。

素晴らしく美味しいそうです。
だって前の会社で過ごした6年間が認められたから。
6年分を込めた渾身のレポートだったから。
途中、ゼルコバが求人しているのを知って、
「おれ、パン屋になる…!」ってなった時もあったね。
一緒にタリスカの蒸留所行ったね、こまっちゃん。
わたしはみくりんに母乳をあげなくてはいけないから、後でちょっとだけ味見しよう。
いいなあ!
わたしはみくりんが卒乳したら、JURAを買ってお祝いするんだ。

外国人であるこの社長、日本語はぺらぺらだった。